銀河団における巨大なエネルギーの流れを発見 〜巨大な銀河たちも、低きに流れていた〜」

銀河団における巨大なエネルギーの流れを発見

〜巨大な銀河たちも、低きに流れていた〜

日本天文学会 2014年春季年会 記者会見資料 (2014.03.18予定)

研究グループ代表 牧島一夫

東京大学 理学系研究科 物理学専攻教授

同上 ビッグバン宇宙国際研究センター長、理化学研究所 MAXIチームリーダー

概要

 銀河の大集団である「銀河団」では、正体不明の暗黒物質が作る強い重力に引かれ、数百個の銀河が広大な空間を高速で飛び回っています。この銀河団内の空間は真空ではなく、そこには約1億度という高温の電離ガスが重力で閉じ込められ、X線を放射しています。銀河が銀河団の高温電離ガス中を運動する際、従来、ガスは銀河に抵抗を及ぼさず、銀河の内部をすり抜けると考えられていました。しかし私たちは、X線衛星「あすか」で多くの銀河団の高温電離ガスを観測した結果、この通説に疑問を持ち、後継機の「すざく」や米国のチャンドラなどのX線衛星、可視光での大規模サーベイデータなどを用い20年がかりで研究を続けて来ました。そしてついに今回、年齢 (距離) の違う多数の銀河団を可視光とX線で観測することで、銀河団に属する銀河たちが 数十億年をかけ、徐々に中心部へと落下してきている事実を突き止めました。この結果は、従来の通説に反し、ガスの抵抗が銀河の運動にブレーキをかけていることを明確に示しています。この過程で銀河がガスに受け渡すエネルギーの流れは莫大なもので、個々の銀河団の銀河で発生する超新星の放出エネルギーの総和を上回るほどですが、今まで誰もその存在には気づいていませんでした。

2014.03.17 update

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プレスリリース写真:可視光(カラー)とX線(青)で見た、近傍(左)と遠方(右)の典型的な銀河団の画像。緑色の丸で示されているのが、この銀河団に属する銀河。数十億年前は銀河団の銀河と高温ガスが同様の分布をしていた(右)が、最近になって銀河が高温ガスよりも中心集中している(左)ことが分かる。(左図の左側の赤い天体は手前の恒星) (Credit: RESCEU/Univ. of Tokyo/L. Gu et al., X-ray (NASA/CXC; ESA/XMM-Newton), Optical (Sloan Digital Sky Survey; University of Hawaii 2.2-meter telescope) )

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研究グループ
牧島一夫 (まきしま かずお:東京大学 理学系研究科 物理学専攻 教授)
顧 力意 (Gu Liyi:東京大学 ビッグバン宇宙国際研究センター 特任研究員)
稲田直久 (いなだ なおひさ:国立奈良工業高等専門学校 一般教科講師)
川原田 円 (かわはらだ まどか:JAXA宇宙科学研究所 高エネルギー宇宙物理グループ研究員)
児玉忠恭 (こだま ただゆき:国立天文台 光赤外研究部 准教授)
小波さおり(こなみ さおり:首都大学東京 理工学系研究科 物理学専攻 研究員)
中澤知洋 (なかざわ かずひろ:東京大学 理学系研究科 物理学専攻 講師)
嶋作一大 (しまさく かずひろ:東京大学 理学系研究科 天文学専攻 准教授)
Poshak GANDHI (英国ダラム大学ラザフォード研究フェロー)
徐 海光 (Xu Haiguang:中国 上海交通大学 物理•天文学科 教授)

当日の記者発表出席者
牧島一夫、Gu Liyi、稲田直久

1 . 研究の背景

(1) はじめに:運動物体に働くガスの抵抗

 野球のフライのボールは、放物線の軌道よりも手前に落下します。これはボールが大気分子を押しのけたり引きずったりする際、エネルギーがボールから 大気分子に受け渡され、結果としてボールに抵抗が働くためです(注1)。スキーのジャンプや滑降競技、スピードスケートなど高速のスポーでは空気の抵抗が 重大であり、新幹線、ジェット機、ロケットなど高速の乗物になれば、さらに影響が大きくなります (注2)。人工衛星でさえ、地球の近くを周回するものは、希薄な残留大気(注3)から抵抗を受け、数年から数十年で落下し大気圏に再突入してしまいます。 宇宙では、いろいろな天体が高速で運動するので、そこでもガスの抵抗が働きます。宇宙は希薄なので抵抗がほぼ無視できる場合もありますが(注4)、逆に宇 宙の年齢である138億年という長い時間をかけると、ガスからのわずかな抵抗が積み重なり、大きな影響となって現れる場合もあります。今回の研究は、この 後者の好例といえるでしょう。

(2) 宇宙の階層構造と銀河団

 我々の「天の川銀河系」では、太陽を含む約1千億個の星々が、高速で運動(おもに銀河中心の周りの公転運動)をしています。宇宙には、これと同様な銀河が無数に見られますが、その銀河たちは図1(左)に代表されるように、数百個が集まって銀河団を作ります。すなわち宇宙には、星⇒銀河⇒銀河団という明確な階層構造があります。
 個々の銀河団は、直径およそ300万光年をもち、正体不明の暗黒物質を大量に擁し、その重力が銀河たちを引き止めています。星たちが銀河の中を運動するのと同様に、1つの銀河団に属するこれら「メンバー銀河」たちは、重力ポテンシャルの中を、400~1500 km/s という高速でランダムに飛び回っています(注5)。唯一の例外は中心に座る「中心銀河」で、どの方向にも重力を受けないため、銀河団の中心に静止することができます。

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図1:可視光(左: © NAS SkyViewより)とX線(右)で見たケンタウルス座銀河団の画像。可視光で見えているのは、ほとんどが銀河で、中心銀河がひときわ明るい。X線は「すざく」衛星の得た画像で、高温電離ガスが滑らかに分布する。どちらも画像の横は一辺が約1° で、270万光年に相当する。

(3) 銀河たちに抵抗は働くか?

 銀河団の内部ではこうしてメンバー銀河たちが高速で飛び回っていますが、その空間は真空ではなく、そこには、数千万度から1億度という超高温の電離ガス(プラズマ)が閉じ込められています(注6)。この銀河団ガスは重力で断熱圧縮されて高温になり、光は出さず、図1(右)のようにX線により初めて検出できます。このガスの総質量は、銀河団に含まれるすべての星の質量和を数倍も上回っています。この驚くべき事実は、1980年代のX線観測により明らかになりました。実際この高温ガスは、宇宙で知られている「通常物質」(注7) のうち、最も多い成分なのです。
 では高温ガス中を運動するメンバー銀河たちに、抵抗は働くでしょうか? もし銀河がガスを完全に押しのけるなら、ガスの抵抗により銀河は徐々に力学的エネルギーを失い、宇宙年齢の間には銀河団の中心へと落下すると見積もられます(注1の計算)。確かに近傍の銀河団を観測すると、高温ガスに比べ銀河たちはずっと中心に集中しています。しかし多くの研究者は「銀河団ガスは銀河の星々の間を自由に吹き抜け、銀河には抵抗を及ぼすことは無い」と考え、銀河の中心集中は何か別の原因によるものとされて来ました。

2. 浮上した謎と、それを解くための新たな仮説

(1) X線観測からの謎

 銀河団ガスはX線を放射することで、宇宙年齢より短時間で冷える計算です。実際、過去の諸外国でのX線観測により、「銀河団ガスはどんどん冷えて中心に流れ込んでいる」という報告が続出し、この考えは1990年代の当初、いわば国際標準となっていました。
 そんな中で1993年、従来のX線衛星の性能を一新する力をもった、日本の誇る図3(左)の「あすか」衛星がJAXA (当時は宇宙科学研究所)により打上げられると、事態は思わぬ展開を見せました。私たちが東京大学理学系研究科を中心拠点として開発した撮像型蛍光比例計数管などで、10例ほどの銀河団を観測すると、ガスの温度は中心部で確かに低下しているものの、外側での温度の半分ぐらいまでで「下げ止まって」おり、それ以上に冷却は進む気配はありませんでした。何かが、ガスを加熱しているようです。メンバー銀河では時折、超新星が爆発しますが、そのエネルギーを足し合わせても、熱源としては大幅に不足です。

(2)謎解きに向けた新たな作業仮説

 私たちは「あすか」の観測を積み重ねた結果、2001年に、従来の通説とは異なる新しい仮説を提唱しました[1,2]。それは「銀河団ガスは電離しているため、そこに網目状に磁力線がからみつき、運動する銀河はこの磁力線を引っ掛ける。またメンバー銀河のもつガスが銀河団ガスと衝突する。これらの過程で銀河に抵抗が及ぼされ、そのため銀河は中心に落下し、逆にそのエネルギーをもらうためガスは冷えない」というもので、図2はその模式図です[2]。

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図2:私たちの学説にもとづく銀河団の中心部分の模式図[2,5]。灰色は銀河で、中心銀河が大きく描かれている、青矢印は銀河の運動、緑の線は磁力線、オレンジ部分は高温の電離ガス、水色はやや低温の電離ガス、赤丸は磁力線のつなぎ替えでガスの加熱が起きる場所。

 図2はもう一つ、重要なアイディアを含みます。中心銀河はガスに対してほぼ静止しているので、閉じた磁力線からなる磁気圏 (注8; 図2の水色)をもつと期待されます。電離ガスは磁力線に閉じ込められる性質をもち、また磁力線は高い断熱効果をもつので、磁気圏内部には、外部(磁力線が開いている部分:図2のオレンジ)とは違う温度のガスが閉じ込められていても構いません。そこで私たちは、中心銀河の磁気圏には、外側での半分ほどの温度をもつ、やや低温の電離ガスが、安定に閉じ込められていると考えました。この「やや低温の電離ガス」が諸外国の観測により「どんどん高温ガスが冷えている」と誤認された可能性が高いと睨んだのです。

 

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図3:本研究を支える日本の宇宙X線衛星たち。いずれもJAXA宇宙科学研究宇宙所提供。(左) 新学説の端緒を拓いた「あすか」(1993〜2001)。(中)活躍中の「すざく」(2005〜)。(右) 学説のさらなる強化の切り札、ASTRO-H (2015年に打ち上げ予定)。

(3) 仮説を検証する試み

 私たちはこの新学説を検証すべく、後続のチャンドラ衛星 (米国; 1999年に打ち上げ)、XMMニュートン衛星 (欧州;2000年)、「あすか」後継機の「すざく」(2005年に打上げ; 図3中) などを用い、研究を続けて来ました。その結果、2つの重要な結果を得ることができました。
 私たちはまず10個ほどの銀河団で、高温ガス中に含まれる鉄やシリコンなどの重元素 (注9)の空間分布を詳しく測定したところ、重元素が、その生産現場である銀河たちより、空間的に大きく広がることを発見しました[3a]。これは銀河団ガスが銀河の内部に流入し、そこで作られた重元素を奪いとり、銀河団の全体に撒き散らす一方で、銀河たちが徐々に中心に落ちて来たと考えると説明できます。
 ついで私たちは、いくつかの銀河団のX線放射を詳しく調べたところ、ガスの温度が中心部に向けて徐々に下がっているのではなく、中心部では、数千万度ないし1億度の高温をもつガスと、その約半分の温度のやや低温のガスとが共存していることを、観測から突き止めました [3b,3c]。まさに図2の水色とオレンジの共存が、確かめられたと言えます。

3. 今回の研究結果

 こうして 2001年以来、私たちの仮説に有利な傍証は得られてきましたが、それを決定づけるには図4に模式的に示すように、メンバー銀河たちが、宇宙の年齢に匹敵する長い年月かけて、確かに中心に向けて落下してきたことを、観測から示さねばなりません。これは今まで誰も考えたことがないアイディアで、天文学の常識に挑戦する大仕事です。

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図4:図2の描像を検証するための研究方針。遠方(過去)の若い銀河団では左のような状態、近傍(現在)の老齢銀河団では右のような状態であることを、観測から検証しようと試みた。

 そこで私たちは図4にのっとり、近傍から遠方まで複数の銀河団を系統的に可視光で観測し、遠方から近傍になるにつれ、次第にメンバー銀河たちが強く中心に集中することを実証することを試みました。なぜなら宇宙では、光が伝わるのに時間を要するため、遠方の天体ほど昔の若い姿を見ており、近傍の天体はより老齢だからです。私たちは2010年の2〜8月、距離(赤方偏移)の異なる34個の銀河団をハワイ大学 (2.2m) インチ望遠鏡で新たに撮像観測し、図1(左)に相当するようなデータを取得ました。ここから、それぞれの銀河団でメンバー銀河がどのように分布しているかがわかりました。私たちはまたそれらの銀河団のX線公開データ (図1右に相当する) も解析し、高温ガスの広がりを求めました。こうして銀河の広がりを高温ガスの広がりで割り算する(相対的な分布に換算する)ことで、個々の銀河団がもつ寸法のばらつきに影響されず、結果が得られると考えたからです。

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図5:銀河の落下を証拠づける結果[4,5]。横軸は銀河団の中心からの距離を、ある方法で規格化したもの。縦軸は、中心からその半径までに含まれる銀河の明るさの総和を、同じ領域に含まれる高温ガスの総質量で割った値で、横軸0.25で縦軸が1.0になるよう規格化してある。

 こうして34個の銀河団の可視光とX線のデータを解析した結果、図5に青で示すように、そのうち赤方偏移が0.11-0.22 (現在より14-28億年前; 注10) という最も近距離の9個の銀河団を平均すると、確かに高温ガス球の中心部に銀河が集中するのに対し、赤方偏移 0.22-0.45 (28-45億年) とやや遠方にある16個の銀河団を平均すると(灰色)、銀河の中心集中度が弱いことがわかりました。さらに34個のうち赤方偏移 0.45-0.89 (45-69 億年前)にある9個を平均した結果 (赤丸)、これら最遠方の銀河団では、ガスと銀河がほぼ同じ広がりをもっていたことが突き止められました[4,5]。すなわち赤から灰色、そして青へと時間が経過するにつれて、高温ガスに対し、銀河がより銀団の中心に集まって来ていたのです。
 私たちはさらに中国•北京天文台などの数名の研究者の協力を得て、スローンデジタルスカイサーベイと呼ばれる大規模な可視光サーベイのデータを二次処理した、340個におよぶ銀河団のデータを入手し同様に解析しました。その結果、今回の天文学会でGuが口頭発表するように、上記34個の銀河団の場合とよく一致する結果を得ることができました。これにより、図4に模式的に示した銀河落下が、より確実となったと言えます。

4. 成果の意義とインパクト

 こうして私たちは、謎の発生からほぼ20年、仮説の提示からは10年以上を費やし、新たな宇宙の事実を明らかにしました。すなわち1千億個の星々からなる巨大な銀河たちは、直径でその百倍に達する広大な銀河団の空間の中を、数十億年かけて何回も周回するうち、ガスから抵抗を受けてブレーキがかかり、重力の低い中心部に向けて、ひっそりと落下していたのです。水だけではなく銀河も、「低きに流れる」ものだったといえるでしょう。この発見のもつ意義とインパクトは、以下の三点にまとめられます。

 第1にこの研究の発想は、冒頭に述べた「ガス中を物体が運動すれば抵抗を受ける」に要約される単純なものです。しかし従来は誰もこの発想に至らなかったため、私たちが世界初の発見者になりました。可視光の観測者は、銀河ばかりに気をとられ高温ガスの存在を重視せず、またX線の研究者は、高温ガス中を銀河が動き回っていることを十分に意識しなかったことが、その一因と思われます。また多くの研究者が、「高温ガスは銀河の内部を自由に吹き抜け抵抗は起きないはず」という固定観念にとらわれていたことも、教訓的です。もしガスが中性ならこの考えは正しいですが、銀河団の高温ガスは電離し、そこには磁力線が網の目のように張り巡らされていますから、この磁力線が銀河の内部で星団や星間物質に絡みつく結果、銀河団ガスは自由に吹き抜けることができず、結果として銀河に強い抵抗を及ぼすのであろうと想像されます。

 第2はこの発見により、銀河団に関する多くの謎が、一挙に解決すると期待されることです。具体的には:(1) なぜ近傍銀河団では銀河が高温ガスより中心集中しているかという長年の課題は、これで説明されました。(2) 落下する銀河が失う力学的エネルギーを計算すると、高温ガスがX線を放射して冷えるのを賄うに十分です。つまり高温ガスが冷えないという謎は「落下する銀河からエネルギーをもらっている」として解決できそうです。(3) 銀河団の高温ガス中には大量の重元素が、周辺まで一様に混ざり込んでいることが知られています。これも銀河が中心へと落下するさい、自分たちが作った重元素を銀河団内部の空間に遺物として残していった結果として理解できます。(4) 1970年代後期から、「銀河団の周辺部には渦巻き銀河が多く中心部には楕円銀河が多い」「遠方銀河団に比べ近傍銀河団では楕円銀河の割合が増える」という現象が知られており、銀河の「環境効果」と呼ばれて来ました。図4にその様子を定性的に描いてあります。なぜこうした効果が起きるかという原因は長年の謎でしたが、「ガスの多い渦巻き銀河は銀河団高温ガスと強く相互作用し、ガスや角運動量を失う結果、徐々に楕円銀河に変態する」「中心部ほど銀河団ガスの密度が高いので、こうした効果が強い」と考えると、一挙に解決しそうです。

 第3はこの銀河落下に伴い、銀河からガスへ受け渡されるエネルギーは、構造形成(注11)が完了した後の宇宙での、最大のエネルギー流の1つと考えられ、銀河で発生する超新星爆発を1桁も上回ることです。すなわち今回の成果は、これまで未知だった、宇宙における極めて重要なエネルギーの流れが、新たに発見されたことを意味します。この流れは宇宙の進化に大きな役割を果たしてきたはずですが、従来、その影響は見逃されてきたと言えます。私たちは今後「すばる」望遠鏡や、2015年に「すざく」の後継機として打ち上げ予定のASTRO-H 衛星 (図3右) を用い、銀河から冷たいガスがはぎ取られたり、銀河が高温ガスを引きずったりする現場を解明することで、この新しい観点をより具体化するとともに、このエネルギー流が宇宙に与えた影響を究明する計画です。同時に、プラズマ物理学者と協力し、銀河と高温ガスがどのように相互作用するかを解明して行きたいと考えています。

5.成果を発表した論文•解説

[1] 新仮説の提示を最初に行った論文:

“X-Ray Probing of the Central Regions of Clusters of Galaxies (銀河団中心部のX線診断)”

Makishima, K. et al., Publications of Astronomical Society of Japan, vol. 53, p. 401 (2001).

アブストラクトURL:http://ads.nao.ac.jp/abs/2001PASJ…53..401M

[2] 上記[1]の和文解説:

「クーリングフロー学説の終焉」

牧島一夫、池辺靖:天文月報 (日本天文学会)、2004年1月号、p.6

[3] 新仮説を強化した成果:

3a. “A Galaxy Merger Scenario for the NGC 1550 Galaxy from Metal Distributions in the X-Ray Emitting Plasma (X線放射プラズマ中の重元素分布にもとづくNGC 1550銀河の合体説)”
Kawaharada, M. et al., Astrophysical Journal vol. 691, p.971, (2009)

DOI: 10.1088/0004-637X/691/2/971

アブストラクトURL:http://ads.nao.ac.jp/abs/2009ApJ…691..971K

3b. “X-ray Diagnostics of Thermal Conditions of the Hot Plasmas in the Centaurus Cluster (ケンタウルス座銀河団における高温プラズマの熱的構造の診断)”

Takahashi, I. et al., Astrophysical Journal vol. 701, 373, (2009)

DOI: 10.1088/0004-637X/701/1/377

アブストラクトURL:http://ads.nao.ac.jp/abs/2009ApJ…701..377T

3c. “Two-phase ICM in the central region of the rich cluster of galaxies Abell 1795: A joint Chandra, XMM-Newton, and Suzaku view (チャンドラ、XMMニュートン、および「すざく」を用いたアベル1795銀河団の中心部の2成分プラズマ描像)”

Gu, L., Xu, H. et al. Astrophysical Journal vol. 749, id.186 (2012)

DOI: 10.1088/0004-637X/749/2/186

アブストラクトURL:http://ads.nao.ac.jp/abs/2012ApJ…749..186G

[4] 今回の研究成果:

“Probing of the Interactions between the Hot Plasmas and Galaxies in Clusters from z = 0.1 to 0.9 (赤方偏移0.1から0.9の銀河団における高温プラズマと銀河の相互作用の研究)”
Gu, L. et al., Astrophysical Journal vol. 767, id.157 (2013)

DOI: 10.1088/0004-637X/767/2/157

アブストラクトURL:http://ads.nao.ac.jp/abs/2013ApJ…767..157G

[5] 上記[4]の和文解説

「誰も気づかなかった銀河とプラズマの相互作用」

牧島一夫、Gu Liyi、稲田直久:天文月報 (日本天文学会)、2013年12月号、p.796

6.用語解説、補足説明

(注1) 運動物体がガスからの抵抗でエネルギーを失うのに要する時間は、a =(運動物体の密度) / (ガスの密度)、t を「運動物体の先頭から末端までが通過するのに要する時間」とすると、およそat になります。たとえば同じ大きさのビーチボールとサッカーボールを同じ初速度で斜め上に投げても、ビーチボールの方が軽い(密度が小さい)ためa が小さくなり、より短時間でエネルギーを失って手前に落下することは、日常生活でも経験することです。また同じ物体が同じガス中を運動しても、速度が増えるとt が短くなる結果、より速くエネルギーを失います。

(注2) 同じ雪上競技でも、フリースタイルのスキーやスノーボードに比べると、時速130 km を越えるアルペンスキーの滑降競技では、空気抵抗を減らす服装が用いられます。同様に高速の乗り物では、空気抵抗を低減するため、流線形のデザインが用いられます。

(注3) たとえば地上 500 km の高度では、大気の密度は1気圧のわずか1千億分の1ですが、それでも、そこを周回する人工衛星に抵抗を及ぼします。それは、この高度を周回する衛星が 7.7 km/s と大きな速度をもつためです。

(注4) たとえば地球は太陽の周囲を公転しており、その軌道に沿って、太陽風と呼ばれる電離気体が流れています。そこで(注1)の概算をすると、太陽風が地球自身に比べ圧倒的に低密度なため、地球が太陽風から受ける抵抗はまったく無視できることがわかります。

(注5) 重力が強いため、銀河は(中心銀河を除き)静止することができません。たとえば中華鍋の斜面の途中にビー玉を置いて手を離すと、ビー玉は底めがけて落下しますが、勢い余って反対側の斜面を昇るでしょう。こうしてビー玉は鍋の中を何回も行き来し、あるいは長円を描いて運動します。中華鍋を重力ポテンシャル、ビー玉を銀河と思えば良いわけです。見方を変えると、メンバー銀河たちが高速で飛び回っていても、銀河団から逃げ出せないのは、強い重力で銀河団につなぎ留められているためです。

(注6) 暗黒物質が自分の重力で集まって銀河や銀河団を形成したさい、宇宙を満たす水素やヘリウムのガスも断熱圧縮で高温になりました。その中で銀河や星が形成され、残ったがガスが現在、高温の銀河団ガスとして観測されていると考えられます。

(注7)「通常の物質」とは、水素、ヘリウム、酸素、鉄など、原子核と電子でできた、私たちの知っている物質のことを指し、正体不明の「暗黒物質」と区別しています。

(注8) 地球は、その半径の10倍(太陽側)から200倍(反太陽側)ほどの広がりの磁気圏を持ちます。太陽のコロナも一種の磁気圏と考えられ、太陽表面から顔を出した磁力管の中に、銀河団の高温ガスと同様な高温ガス(プラズマ)が閉じ込められ、やはりX線を放射しています。太陽コロナは、太陽表面の対流運動などで加熱されていると考えられます。

(注9) 銀河団が生まれた時、高温ガスはほとんど、水素とヘリウムのみだったと考えられます。やがて銀河に属する星の内部で重元素が作られ、それが超新星爆発などにより、まず星から銀河の星間空間へ、ついで銀河団の銀河間空間へと、放出されたと考えられます。

(注10) 赤方偏移zは、宇宙の膨張に伴って電磁波の波長が長くなる効果を表す量で、宇宙の距離の指標となります。z=0は現在を表し、zが大きくなるほど、遠方すなわち過去の、より若くて小さかった時期の宇宙を見ることになります。z=0.1、0.5、1.0は大まかに、現在から約13億年前、約50億年前、約77億年前の過去に相当します。宇宙の年齢は、およそ138億年。

(注11) 宇宙の進化の過程で、暗黒物質が重力で引き合って集まり、通常物質もそれに引かれて集まることで、無数の銀河や銀河団が形成されました。これを宇宙の構造形成と呼びます。

2014-03-3